Written By: 川俣 晶
「これは面白いじゃないか」
「どこが?」
「これは結局、九郎丸の心の物語なんだ。刀太を助けるために援助者もなく、自分で自分の心を決める必要がある。でも、危機が去ってしまい、緊張感が失われるとやはりぶれてしまう。九郎丸は、男として刀太の相棒になりたいと思いつつ、同時に女の気持ちも捨て切れていない。刀太に必須の何かをなすときだけ、揺れが止まるわけだが、その時だけなのだ」
「心を丁寧に描いてあるわけだね」
「ここは重要。心のない人形の物語なら、改めて読む意味なんか無いからね」